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大阪高等裁判所 昭和30年(く)9号 決定

本籍 大阪市○区○○○町○丁目○○○番地

住居 同市○○区○○○町○丁目○○番地

少年 無職 小川清(仮名) 昭和十二年十一月二十六日生

抗告人 法定代理人親権者父

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣旨は、右少年は、昭和三十年三月十七日大阪家庭裁判所において、審判の結果中等少年院送致の決定を受けたが処分に不服があるから、抗告する、というのである。

本件少年に関する大阪家庭裁判所昭和二九年少第三四六一五号、同第三六〇一〇号、昭和三〇年少第一七九七号各保護事件記録及び添附の同裁判所昭和二八年少第一三四九号、同第一三〇〇三号、昭和二九年少第二一五二六号各保護事件記録を調査すると、少年は、昭和二十六年(中学二年)の頃から不良化し昭和二十七年六月中旬から同年十一月末頃までの間、学友等数名とともに、暴行八件、恐喝三件、傷害一件を犯し(大阪家裁昭和二八年少第一三四九号保護事件)、昭和二十八年四月頃から覚せい剤の使用を始め、同年八月頃には、パチンコ店で知合となつた成人二名とともに恐喝をなし(同昭和二八年少第一三〇〇三号保護事件)、中学卒業後大工見習となつたが、約二ヶ月で止めて働かず、昭和二十九年に至つて覚せい剤の使用が激しくなつたため、実父は少年を精神病院に入院させ、中毒症が治つたかに見えたが、同年七月傷害二件を犯し(同昭和二九年少第二一五二六号保護事件)たこと、大阪家庭裁判所においては、少年の両親が少年の補導に熱意を有し、かつ少年自身やや反省の態度があると認め、同年八月十六日少年を保護観察に付する旨の決定をしたところ、なお素行改まらず怠情であつて、父の腕時計を持ち出して入質するなど、保護者の正当な監督に服さず、将来罪を犯す虞があり、覚せい剤を自己に施用するなどの非行(原決定の掲げる第一、第二の非行)があつたが、当時覚せい剤の使用量も少かつたので、同年十二月十三日同裁判所は少年を家庭裁判所調査官の試験観察に付したこと、然るにその後もなお勤労せず、ささいな事で発作的に毋親や妹に暴行を加える始末であつて、昭和三十年二月二十五日には、早朝から遊び歩いて夕方帰宅したのを父に叱責されたのを憤り、家を飛び出して、通行の女性の顔を理由なく蹴りあげて傷害を加えた(原決定第三の非行)ことを認め得られる。右のように少年の非行歴は長期に亘り、その間種々補導を試みたが効果がなかつたのであつて、結局原決定の認定するように、少年の怠情、放縦な生活態度が固定化しようとしているこの際、在宅保護による矯正補導は適当でなく、少年を少年院に収容して、規律ある生活訓練を通じて少年の性格と行状の矯正を図るべきであると考える。原決定が少年を中等少年院に送致する旨の言渡をしたのは相当であつて、原決定には法令の違反、重大な事実の誤認又は処分の著しい不当等の欠点はないから、論旨は理由がない。

よつて、少年法第三十三条第一項、少年審判規則第五十条により主文のとおり決定する。

(裁判長判事 松本圭三 判事 山崎薫 判事 西尾貢一)

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